彷徨える宇宙人(ダークスペース編)

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(序章) サドン編

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(序)

 宇宙は無限の謎に満ちている。謎に包まれた世界、否、謎に開かれた世界が宇宙である。
 人間の科学力は、その謎の一部を明らかにしたのに過ぎないのだ。
 科学が今よりも未発達だった時代、想像力に支配された世界が、そこにあった。

 あなたが、現在は科学の発達した時代であって”ほとんどの事が既に解明されている”と考えておられるならば、宇宙について二つだけお聞きしたい。

 「宇宙に果てはありますか?」
 「宇宙はどの様に出来ているのですか?」

 答えたいあなたは勉強して下さい。
 興味があるならば、その謎を解明して下さい。
 やがては滅び行く地球・太陽・銀河系から、我々の遠い子孫を救う礎を見つけるかもしれません。

 今も科学は十分に未発達です。
 しかしながら、想像力に満ちた人達の世界とは言えません
 空想をしましょう。
 夢を持ちましょう
 誰もが抱いている心の中のロマンを大切にしましょう。

 (1)

 男女24人のサドン人でスタートした宇宙船は暗黒の空間を飛行しつづけた。
 大気のない空間は暗い。その空間に恒星のみがスポット的に明るく浮かぶ。
 
 「航路は順調だ」 と、キメロン。
 「ブレーキは出来るだけ使うな」 と、最年長のカイン。
 「承知だ。いつ果てるとも分からない航海だ、燃料は貴重だ」と、 担当(機関長)のキメロン。
 「大気の無い空間は、摩擦減速の少ない慣性の法則の世界だ。我々は目的の星に着くまで、飛び続けねばならない。大気は無くとも放射線はある。恒星との距離に注意しながら、スイングバイ航法で乗り切るのだ」 カインは乗組員全員の長(船長)でもある。
 「現状、宇宙塵帯は避けるのだ。ガス帯もだ、宇宙船の損傷を避けねばならない」
 「放射線などの観測は我々に任せてください」 ウリキが言った。弟のシャーリキとは双子である。彼らはIQH(知的q粒子被爆者・・参照:サドン編)なのである。
 「大気はおろか、現状知られる限りの最小素粒子、さらにそれ以下の小粒子放射線も検出してみせますよ」 自信たっぷりにシャーリキも応じる。  
 
 「今はエンジン停止状態で船は進んでいる。消費しているエネルギーは船の内部で起こっている。船内エネルギーの保存にも留意してくれ」
 「リサイクル装置は万全です。宇宙線エネルギーの利用と保存の技術も実用化が近いわ」 と、ターワ。彼女もIQHである。
 「エネルギー保存の法則に合致した設備が完備すれば、最高なんだがな」 カインは笑いながら言う。「エントロピーがね」 と。
 「だから、分散するエントロピーを、外部からの放射線エネルギーでまかなうのです」 と、ターワ。
 「うーん、期待するよ」 カインは、IQHの能力を尊敬しつつ、畏怖していた。
 
 「ダークエネルギーの利用か」 カインはつぶやいた。
 ダークエネルギーとは、全宇宙を構成する全てのモノの73%を占める未知のエネルギーなのだ。残りは23%がダークマターであり、我々が感知しているモノは4%にすぎないのだ。
 いま、この宇宙船は、真空の大気の中を飛行しているのではない。おそらくは、ダークマターとダークエネルギーに満ちた空間に浮かんでいるのである。

 バル太陽系は抜けた。
 だが、この銀河(M61)を抜けるのさえ、容易ではない。まして、他の銀河系に到達することは、現状のイオンエンジンでは不可能に近い。
 元より、自分達の世代で、目的となる星に到達しうる可能性は極めて低いのだ。
 
 q粒子を放つ過去の超新星爆発は、この円盤状銀河の中心付近のバルジ(膨らみ)で発生している。
 惑星サドンの属するバル太陽系は中心から外へそれた位置にある。
 宇宙船は、半径約1万5000光年の銀河円盤の中心から、円盤の先端に向かって離れてゆく。
 なおも、銀河圏の先端までは70光年に及ぶ距離がある。

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ここで一息
 地球から、およそ4100万光年彼方のM61銀河は、その時点でおよそ4100万光年昔の姿である。この物語のサドン人達の活動も、その時点での活動であると理解して下さい。
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 (2)

 距離や時間を超えて、なお其処に存在する自分達が必要なのだ。
 そんなことは不可能、我々地球人の一般的な考えである。
 
 宇宙空間に飛びだすサドン人の考え方はこうである。
 ”異次元空間を利用する”
 異次元の存在なくして、三次元立体構造だけでは、現宇宙は考えられないのだ。
 
 宇宙船に装備された超4Dタイムコントロールシステム(S4DS)とは、現次元でのあらゆる大気や放射能を完全に遮断する装置なのである。
 サドンでの実験は大気・放射線の絶対遮断にまでは至らなかったが、極めて近い時点において、特異な現象が発見されたのであった。対象となった物体の大部分が消失したのであった。固体が蒸発したのではない。固体・液体・気体を含めた多様体物質の質量が消滅したのである。
 
 この次元から消滅した物体はどこへ消えたのか?
 彼らは”異次元へ移動した”と結論した。他に考えようがなかった。
 では、異次元へ移動した物質はどうなったのか?異次元でのこの物質の経過は? 当然、現次元の存在者には分からない。

 だがここに、興味深い提案者が出現した。
 若き考古学者、ジューラであった。
 彼は消滅した一つの固体に注目した。それに酷似したモノを知っていたのである。
 その物はペナ島の山中に発見され、謎の物体として、これまでに扱われてきたところの、円筒形のマヌカイト(古銅輝石安山岩)であった。
 マヌカイトはペナ島では本来産出されない岩石であった。
 その形状には、人工的な様相が強く表れていたのである。
 ジューラは、この二つの物体が似ていることを、提案したのである。
 
 超4Dタイムコントローラーシステム(S4DS)の発案者であり、実験責任者であったアシュロが、それを確かめた。
 その結果、ペナ島で発見された円筒形のマヌカイトは、古く長い年月経過による、多少の欠損や汚染が見られたけれども、実験によって消失した固体に間違いがないことが確定したのであった。
 有史以前の火山活動によって生成したマヌカイト、その円筒に書かれていた微かな文字の痕跡、痕跡中の元素の経時年代分析で、それは凡そ2000年前のものと分かった。
 話はややこしい。
 このシステムの実験によって消失したマヌカイトは、異次元に飛ばされ、さらに凡そ2000年昔の時代へと時間を下った後、現次元に出現したのであった。
 異次元に空間(?)があり、異次元から、この次元へ入ることも可能なのだ。
 もしかして、その次元空間(?)から、任意のこの次元の、任意の空間への進入も、可能なのかも知れないのだ。

 (3)

 この実験のポイントは、実験対象物の、外界からの遮断にあった。
 当然、q粒子も外界因子として、遮断の対象であった。
 実験時点において、q粒子の飛来は無かったが、それが存在していたとしても”遮断し得た”と確信出来うる、実験結果であった。
 
 ここで当然の議論が起きた。
 「宇宙へ逃げる必要はない!」
 「S4DSでは野外活動は不可能だ!」
 「子孫のことを考えろ!」
 白熱した議論の末、両者の言い分は共に採択された。
 共に大きなリスクがあったが”若者は宇宙をめざす”・・これを押さえることが出来ない。

 そして、第一陣が宇宙へ飛び出したのであった。
 
 「リスクだな」
 「アドベンチャーだな」
 「リスクやアドベンチャーがあるから人生は楽しいんだ」
 宇宙船の乗組員は全員が夢とロマンの持ち主であることに間違いはなかった。
 リスクやアドベンチャーが何故楽しいのか。
 それは、それらが大きければ大きいほど、彼らの全身全能を試されることになるからであった。
 軽いリスクや軽いアドベンチャーはもちろん楽しい。
 自信に満ちたサドン人の集団、それが彼ら24人であった。
 
 S4DSは外界からのあらゆる粒子を遮断する装置でもある。これの担当者は、サドンに残ったアシュロ、の直弟子であったシャクラであった。
 飛来する素粒子を吸収し、宇宙船内のエネルギー源に転換しようとする女性ターワとは、対照的な存在の好ライバルである。
 
 現状、S4DSは不稼動であり、ターワのエネルギー転換研究は進んでいた。それは並行して、放射線吸収装置の開発でもあった。シャクラは良き協力者であった。

 宇宙船は放射線レベルのより低い空間めざして、暗黒の道のりを進んでゆく。
 だが、シャクラの担当するS4DSを稼動させるに好条件の、暗黒度の高い(極低密度放射線レベル)空間はまだ出現しない。
 「我々は、この渦巻状銀河のディスク面に沿って平行に進んでいる。この面にいる限り、放射線レベルの極端な低下は望めない。なぜならば、この銀河上の恒星群の分布範囲内にあるからだ」 カインが言う。
 「スイングバイ航法を利用し続けるには星の引力・遠心力が不可欠だ。だが、これでは銀河を抜けて、ハイレベルの暗黒空間に達するまでに、我々24人は、年老いて、とっくに死んでしまっている」 キメロンも応える。
 「ディスク面に対して、より垂直に航行する、しかないのだ」 カインが続ける。
 「ディスクに対して、より垂直な自転をしている遠心力の強い惑星を利用しよう。それにより、皿面をはなれることにしよう」 と、結論づけた。
                                           
                                             (4)
 
 宇宙船乗組員全員が集められ、説明がなされる。
 ターワが言った。「放射線エネルギー吸収バッテリー(RB)は完成間近です。もう少し待って下さい。その後、バッテリーを充電してから皿を離れるのが得策です」
 「バッテリー容器の問題点は解決したのか?」 と、カイン。
 「ええ、シャクラの協力でS4DSをヒントにつくり上げました」 と、ターワ。
 「より低性能なS4DSで十分な効果があります」 と、シャクラ。
 「なるほど、放射線を遮断する装置は、放射線をエネルギーに転換し溜める容器にも使えるわけだ」 と、カインは続けた。
 「より有効に利用可能な星に遭遇するまで、まだかなりの時があるだろう。ターワ、シャクラ頑張ってくれたまえ」 
 「成功すれば、この宇宙船の航行エネルギーは無限だ。期待するよ」 キメロンも嬉しそうである。
 「より有効なエネルギー源となる放射線帯の観測は、我々に任せてくれ」 ウリキとシャーリキもエールを送る。

 「食料品調達計画にもスグレモノになりそう」 食品担当の生物学者女性マユルも期待が大である。「だって、幹細胞からの肉や野菜等は、いくら美味しくても、精神的に飽きるでしょう。光と熱で栽培した野菜や果物を、多量に準備したいですからね」
 「腕が奮えるね」 と、コックのトック。
 
 「自力で、渦巻き銀河の皿から垂直に脱出できるかも」 カインは思った。「エネルギーが切れるまえに、皿に戻る必要があるかも」 とも。
 暗黒度の高い空間では、エネルギー源となる放射線も希薄だからである。
 
 時はいくらか過ぎてゆく。
 低性能S4DS(LS4DS)がS4DSの内側に張り巡らされる。両S4DSの中間にRBの基板が設置されてゆく。
 RB基板は放射線エネルギーを熱エネルギーや電気エネルギーへと変換可能な基板である。
 開閉可能な宇宙線吸収口が、十数か所、船体の周囲に設置される。大型の吸収盤も数箇所の吸収口に取り付けられる。

 「順調だな」 と、エネルギーレベルゲージを見ながら、機関長のキメロンはターワに言う。
 「宇宙に放射線は無限です。推進エネルギーと生活エネルギーの量的問題はこれで解決します」 と、ターワ。
 「時が来れば、さらに機材用の材料も調達が必要だ」 と、カイン。「とりあえず、エネルギーを満杯にしよう」
 そして
 RBは完成した。
 放射エネルギーは恒星が多く出す。身近な恒星に接近する。やがて、RBはエネルギーで満杯となった。
 宇宙船は、その恒星の巨大衛星(惑星)を利用してスイングバイし、ディスク平面から垂直方向へと、脱出する。
 
 ウリキとシャーリキの逆探索が始まった。
 それは、極低レベル放射線空間の探索である。
 
 「さしづめ、重力の無い擬似ブラックホールをさがすと言うところだな」と、ウーリキ。
 「放射線の射さない闇帯でもいいさ」 と、シャーリキ。
 そんな場所〜、有るのかな〜 と、二人同時に唱和する。
 「その気の合うところで、よろしく頼むよ」 と、カインも笑いながら相づちを打つ。
 他の乗組員も拍手する。チームワークは良好である。
 

(5)

 皿とは言え、銀河の皿は、それほど薄くない。
 しかし、宇宙塵帯やガス帯を避けてきたこれまでの航行が、いつの間にか、宇宙船を、皿の最表面に浮かんだ状態に保っていたために、比較的に容易に皿を抜け出すことに成功した。
 初速スイングバイのスピードはほとんど落ちず、イオンエンジンが加速する。
 「すごい、このままでは、光速級のスピードも可能だな」 ウリキがおどける。
 「まさか」 カインが笑う。
 「宇宙線量が急速に減少してきたぞ」 計器を見るシャーリキが報告する。
 
 乗組員全員に、これまでとは異なる緊張感が高まってきた。
 サドン脱出に続く二度目の正念場が近づいてきていた。
 それは、全員が”自らを異次元に飛ばす!”と言う、未知への不安のためであった。
 不安はあったが、全員覚悟は出来ていた。

 ”今さら何をか言わんや”であった。
 希望や夢は、そこに有ったからである。
 ”他の銀河、q粒子の無い、安全な銀河へ” が彼らの当面の希望と夢であった。
 否!、サドン人の希望と夢であった。
 試行錯誤の、時間も場所も存在しない。

 「ところで、S4DSの性能は未だ未知だ。仮に、異次元へ進入したとしても、その先が不明だ。未知の異次元に、そのまま留まるのか、過去あるいは未来へと、どの様に移動してしまうのか、どうやって現次元へ戻るのか、皆目不明だ。何か手立てはあるのか?」 と、キメロンがカインに聞いてみる。
 「わからない。全ての様相には次元が異なる要素が含まれる。我々が、一時的にせよ現次元から消滅することだけは確かである」 と、カイン。
 「ほぼ自殺行為に等しいな」
 「そのとおり」 
 「全員、その覚悟で来ている」
 「わくわくするよ」 

 宇宙船(spaceship)は銀河渦巻きから垂直に離れ、徐々に、より暗黒の空間へと侵入して行く。
 
 やがて、
 皿を離れて、宇宙線量は確かに減った。だが、その減衰曲線は時間軸に対して、ほぼ平行になってきた。もはや減衰曲線とは言い難い時期が訪れた。

 「この辺りで手を打たないと、我々の寿命が尽きてしまうよ」 ウリキが半ば怖気(おどけ)て、背伸びしながら声をだす。
 「うん」 カインは船長席で腕組みをする。
 全員に緊張が走る。
 「待てよ!」 そのとき、シャーリキが叫んだ。

(6)

 「これは何だ!」 シャーリキが叫んだ。
 「変だ!」 ウリキも首を傾ける。
 「どうした」 カイン達もレイビジョンの前に集まる。
 「この画面の空洞は何なんだろう。まるで、ダークスペースの中のブラックホールだ」 ウリキが指さす画面にはポッカリと空洞があった。
 「計器の故障じゃないのか?」
 「サブビジョン画面も同じだ。故障じゃない」
 ・・・・・・・
 「もっと、近づくのだ」 カイン。
 「X線は?宇宙ジエットは?」 キメロン。
 「周辺に超重力を示す兆候は無い」 「新タイプのブラックホールだ」 ウリキとシャーリキが強調した。

 宇宙船は近づいてゆく。
 全乗組員が緊張し高揚していく。
 
 「これは!」 再び、シャーリキが叫んだ。「これは、ブラックチューブかもね、次元がつかめない存在だよ」 その表情は、あきらめ顔の笑みである。
 「そうか!ホールならば、奥行や深さが幾らかでもつかめるんだがな」 ウリキも兄弟に合わせる。
 「先は異次元、何一つ解っていないの!」 ターワがたしなめる。
 
 「よし、全員を集めろ!」 カインが号令した。
 ・・・・・・・・・
 「諸君、ついに来るべき時が来た。これ以上は無いと考えられる”ダーク空間”がそこにある。
 異次元へ飛び、遥かなる空間へ脱出する時が来た。この宇宙線すら存在しない真黒空間には、S4DS(超4Dタイムコントロールシステム)すら、現状必要としない。
 だが、このS4DSが必要となる時が必ずくるだろう。
 諸君、自身の体を固定してくれたまえ。なに、恐れることはない。我々は宇宙船サドン号と共にある。どこまでも!」 
 ・・・・・・・・
 「キメロン、頼む!」
 「OK!]
 「マックロ空間まであと何分だ?」 キメロンの声。
 「不明だ!が、外部空間から判断すれば、およそ27分だ!」 シャーリキが応える。(*お粗末なSFにつき、地球での時間を採用させていただきます)
 「イオンエンジン停止!」 キメロンの声 「予定の行動に移れ」 と。
 「エンジンおよび全てのエネルギー吸収および放出装置を収納せよ!」
 ・・・・・・・・
 宇宙船サドン号は殻を閉じ、カプセル状の機体へと変形していった。惰性が宇宙船を異次元空間へと導く。

 (7)

 異次元空間が目前に存在し、そこへ”サドン人にとっての、既存次元空間から侵入(進入)する”と言う事は、異次元側から判断すれば、異物質が侵入してきたことになる。”異物は排除される”と言う原則が、この次元空間に於いても適用される可能性がある。
 「スピードは?」 カイン。
 「ジャスト1マッハだ!かなりの減速だ」 と、キメロン。
 
 カプセルとなった宇宙船サドン号は、排斥を覚悟して、異次元空間へと飛び込んだ。
 24人のクルーは息を呑んで、状況を見守る。
・・・・・・・・・
 「変化は?」
 「無い?!」 
 「時計は?」
 「正常だ!」
 「外部は?」
 「レーダー停止状態!窓外をみろ!」
 「闇ではない?!」 
 「明かりでもない!」 
 窓をのぞく全員が同様に、ビビッドに反応する。
 「時間のチエックを忘れずだ」 カインが自分に言い聞かす。
 「窓から何か見えるか?」
 「見える!」 窓外を注視していたほぼ全員が言った。
 「何が?」 少し遅れて窓に向かうカインが聞いた。
 「さあね」 コックのトックが肩をすぼめた。
 
 サドン号の左舷空間に、広く動的な映像が存在した。
 宇宙であった。
 暗闇の中に恒星が銀河が浮かんでいたが、以前と違っていた。
 「動いているんだ!宇宙が!」 キメロンがカインに近寄り、言った。
 「確かに!」 カインが応える。「宇宙船はどうだ?」
 「計器上は停止している。自分の第六感的にも停止状態だな」 とキメロン。
 
 「高みの見物、って感じ」 これも近づいてきたウリキが言った。
 「まさしく!」 カインが同意する。つづいて言う。
 「高次元からの眺めだ」 
 「より、低次元からの眺めではないな」 キメロン。
 
 ここは正しく、既存宇宙よりも、より高異次元の宇宙、つまりハイコスモ空間であった。
 点や線や平面や立体を越えた高次元に位置していた。否、位置の概念すら定かではない。

(8)

 「動いている宇宙、あれは時間の流れだ!」 カインが指摘する。既に全員がそれを納得していた。
 「我々は宇宙の暗闇を越えたのだ」
 
 「我々の時間はどうなっているんだ?時間の流れは一定なのか?可変なのか?」」
 「我々の位置は変えられるのか?」
 「どうやって、元の宇宙へ戻るんだ?」
 「ここはダークマターの中なのか?」
 「ここにダークエネルギーはあるのか?」

 「我々は目的がある。われわれの目的にそう行動は可能なのか?」
 
 これらの全てが疑問符として残る。

 〜2008.03.14(ダークスペース編・完)